「間に合わない」「待てない」私たちが時間をコントロールするために
ADHDを抱える人は時間管理が苦手で、「待てない」や「間に合わない」といっ悩みを抱える人が多いのではないでしょうか。
「待てなかった」エピソード
私は子どもの頃、さっきスーパーで買ったお菓子を今すぐ食べたくて毎回必ず床に寝っ転がって大泣きするほどのタダをこねていました。
食べたいと思ったらどうしても今でなければダメでした。今でもそうです。
他にも、小学生の私は読書が好きで図書室には読みたい本がいつもたくさんありました。
授業中突然「そうだ!あの本が読みたい!」と思いつきます。
一度思いつくとどうしても今すぐに読みたくなって、休憩時間まで待てずに教室を飛び出すのです。
または、ソワソワしながらなんとか我慢しても、休憩時間に図書室に行ったきり次の授業が始まっても教室に帰ってこない。業を煮やした先生が般若のような顔で迎えに来る……。
大人になって、流石にランチに行ったっきり仕事に戻らない、なんていうことはなくなりましたが、「待てない」特性は「なおる」ことはありません。
「間に合わなかった」 エピソード
一方でこんなこともありました。
私は子ども時代田舎に住んでいたので、家から学校までの間に信号がひとつもありませんでした。
小学校では図書カード(今はもうないんですかね?わからない方はジブリ映画の「耳をすませば」で雫が聖司くんの名前を見つけたあのカードです。)の枚数が学年で一、二を争うほどの本好きだったので、帰り道は毎日のように本を読みながら歩いて帰りました。(危ないのでやってはダメです。)
家まで待てないので図書室を出てすぐ本を広げ、次に気がつく家の玄関でを開けて「ただいまー」と言っているのです。
どこを通って帰ったかはちゃんと言えますが、普通に歩いて帰ると40分くらいかかる道のりが一瞬に感じられました。
他にもあります。
いつも好きな授業はあっという間でした。
一度取り掛かったら夢中になります。
理科の実験や図画工作(美術)の授業は大好きでした。
「キリのいいところ」までやりたくて、チャイムが鳴っても終えられないのです。
時間が足りない!!といつも思っていました。
中学になっても高校になっても片付けは一番遅く、次の授業のクラスが来て、慌てて道具を抱えて教室を出ていくような生徒でした。
「待てない」「時間が足りない」この二つは同じ「時間」に関する事ですが、全く別の性質を持っています。
「待てない」のは実際の時の流れよりも感覚としての時間がゆっくり過ぎるから(時間の過小推定)。
「時間が足りない」のは実際の時の流れよりも感覚としての時間が早く過ぎるから(時間の過大推定)。
むしろ真逆と言ってもいいでしょう。
ADHDは「時間感覚の障害」と言われることがあります。
私たちは、定型発達者に比べて時間感覚が鈍いのです。
「鈍い」というのはゆっくりという意味ではありません。
時に早くなり、時にゆっくりになるのです。
つまり、「不安定」ということです。
私たちは自分の意思でうまくこれをコントロールすることが出来ません。
「まだある」か「もうない」か。全神経を目の前のことに向けてしまう私たち
ここで言う「私たち」は発達障害を抱える人全員を指す訳ではありません。
時間感覚が鈍い私たちのことです。
私たちは時間の感覚が鈍く、「後15分」とか「30分間」という実際の時間の流れと頭で感じる時間の流れにズレがあります。
集中している時と集中出来ていない時の差があまりにも激しく、それはまるで幼い子どもの時間感覚のようで年齢に不釣り合いです。
例えばですが、子どもの頃、ゲームや読書など遊びに夢中でお母さんに「7時までって言ったじゃない!」と怒られ、「後5分」「後10分」と言っていつまでもゲームをやめずに最後にはそれを取り上げられたような経験はありませんか?
また、「早くお風呂に入ってしまいなさい」と言われているのに、「後5分」「このテレビが終わったら」などと、いつまでたっても入れないという経験はありませんか?
私はそれが今でも続いています。
「やめられない」し「始められない」のです。
いい歳して……と思われますか?
全く自分でもそう思います。
では何故分かっているのにできないのか。
私たちは物事を0か100かでとらえることが多いです。
「できた」か「できなかった」か。「ある」か「ない」か。
失敗したことがあればそれは「できなかった」ものになります。
時間もおなじです。
基本的には「まだ時間がある」か「もう時間がない」か。どちらかです。
「出かけるまであと10分あるからこれを片付けておこう」「時間までまと5分あるからこのラスボスを倒したい」
実際には「あと10分(5分)しかない」から出かける方向へ気持ちと体のをシフトして行かなければならないのですが私たちはついつい全神経を目の前のことに注いでしまいます。
その結果、その時間になってもまだ気持ちと体が出かける方向へシフトしておらず、その時点で初めてのろのろと動き出すのです。
そして、いよいよ時間が無くなってきたころにようやく気持ちと体が追いついてきて、鍵がない!携帯がない!とバタバタします。
私は出来るだけ、出かける時間をかなり早めに設定するようにしています。
8:30に会社に行くのに対して、遅くとも一時間前には近くまで行っておくようにしていたいです。
起きるのは5:00、家を出るのは6:00です。
気がつくとあっという間に時間が過ぎていたりいつまでも探し物をしたりして、かなりバタバタするので本当は4:00には起きたいのですが、睡眠障害もあり朝なかなか起きられません……。
一人暮らしなの自分の身の回りの準備さえすればいいのですが、これでギリギリ会社に間に合います。
キリのいい所までやりたい私たち
「いつまでやってるの!」
「もう時間よ!いい加減にしなさい!」
子どもの頃から何度となく先生や親にそうやって怒られてきた私たちは「何度言っても聞かない自分勝手な子達」だと思われることが多いように思います。
「怒られる」→「できない」→「怒られる」→「できない」を繰り返すうち、私たちは益々意地をはり「うるさいな!放っておいてよ!」(もしくは落ち込み何も言えなくなり自己肯定感を下げたり、対人関係を悪くします。
私たちはなぜ時間を守れないのか。
それは「終わりの認識」の仕方にあると思うのです。
私たちは「時間」ではなく「区切り」で終わりを実感します。
つまり「〇時になったら」「〇分後に」という「時間の終わり」は時間の感覚が不安定な私たちは時間が来たことも、終わらなければならないことも、頭ではなんとなく理解しているけど行動を伴わせることは難しいのです。
過集中モードの時とその逆の時でギャップがありすぎるからです。
私たちは「続けることが出来る(過集中の時の作業効率の高さはすごい!)」し、このままやらないと「次にこんなに効率よくできる時がいつくるのか分からない(注意力散漫な時はビックリするほどミスが増え、作業も恐ろしいほど進まない)」からです。
だから、これ以上続けると時間が厳しくなるとうすうす感じていても区切りが来るまでやめられない……。
「区切り」で終わりをコントロールする
私たちが「終わり」をコントロールするにはどうすればいいのか。「区切り」をうまく使ってやることです。
時計の針や数字見ない方法で「区切り」を付けるのです。
意図的に「区切り」をコントロールするためには例えばこんな方法があります。
- タイマー(アラーム音、振動、目盛り)を使う
- よく知っている音楽、映像を流す
- 自分の「できる量」を知って(toggle timerやたすくま が使える)できるものだけやる
- ラジオを聞く
詳しく見ていきましょう。
タイマーを使う
最も一般的なのは、100均でも売っているキッチンタイマー やスマホに入っているタイマーアプリで時間が来たら音を鳴らす方法です。
ピピピ……という音で効果が無い人は、お気に入りの音楽に変えてみてください。
そうすることで意識が音楽に向くので、今やっていることから意識がそれやすくなります。
それから、私は音だと反射的に止めて作業を続けてしまうことが多いので、バイブレーション機能を使って、区切りが来たことを体で実感するようにしています。
時間が目に見えないのでわかりづらい、という人は目盛りが減っていくタイマーもあります。
よく知っている音楽、映像を流す
「よく知っている」というのがポイントです。
映像は特に初めて見るものだと内容に集中してしまいます。
何度も繰り返しみたアニメやドラマなど、BGMに出来るくらいのものを流しながら作業しましょう。
アニメだと約20分~30分、ドラマだと大体1時間です。
私はあと一時間あるな、と思ったらドラマを見ます。
水戸黄門とかでもいいですよ(笑)
だいたい最後に印籠が出てくるので「この紋所が目に入らぬか!」と言ったらもうそろそろ作業の手を止める頃です。
自分の「できる量」を知る
これも外せません。
私はAのノート1ページをまとめるのにだいたい15分~30分程度かかります。
でかけるまで30分を切っている時にはノートのまとめは始めません。
始めてしまうと確実に遅刻するからです。
自分がそれをするのに何分かかるのか一度チェックしてみるのもいい方法ですよ。
チェックするのに便利なアプリは
https://itunes.apple.com/jp/app/toggl-work-time-tracker/id885767775?mt=8&uo=4&at=1001lmNt
https://itunes.apple.com/jp/app/atimelogger/id358979305?mt=8&uo=4&at=1001lmNt
です。
私はどれも使ったことがあります。
毎日記録をつけることは出来なかったですが、一度使うだけでも、自分の思っている時間と実際にかかる時間にズレがあることにに気がつけました。
使うとしても一つだけ自分の使い易いもので十分です。
かかる時間が分かったら、出かけるまでに残り30分しかない時にいつも1時間かけてやっていることを始めないように心がけることができます。
ラジオを聞く
ラジオはいつもだいたい決まった時間に決まったコーナーをやっています。
学生時代、テレビの占いを見終わってから家を出るのがルーティーンだったと言う人がいますが、ラジオの方がもっと便利です。
いつも聞いているうちに、このコーナーが終わった頃に家を出ればちょうど良いとか自分の生活リズムの中にラジオが自然に溶け込んできます。
画面をずっと見ていなければいけないテレビとは違って、ラジオなら聞きながら作業をすることが可能です。
続きが気になるならスマートフォンのアプリのradikoなどで歩きながら聞けばいいんです。
ニュースて流行もわかって一石二鳥ですよ( ^^ )
気持ちを切り替えてくれるもの
「区切り」で終わりを知ることに慣れたら、今度はスムーズに終わるための気持ちの切り替え方です。
それにはこんなことがオススメです。
- 単純作業
- 深呼吸
- ストレッチ
単純作業
これが一番オススメ!
あまり頭を使わなくてもできるような、ノートの清書作業とか、洗濯物をたたむとか、書類をスキャンするとか、本棚の本の背表紙をきっちり揃えるとか……なんでもいいです。
自分が何も考えなくてもすぐとりかかれてしばらく続けても億劫でないものかがいいです。
単純作業を挟むことで次の行動に移りやすくなりますよ。
深呼吸
深呼吸をすると交感神経の働きが弱まって、副交感神経の働きが強くなります。
副交感神経はリラックスをしている時に働くので、深呼吸をすることでリラックスした状態へ切り替えることが出来体と頭のリフレッシュになります。
ストレッチ
さらにストレッチをして体を伸ばて解すことで、リフレッシュ効果が高まり血流も良くなるので集中力が回復します。
気分転換にはもってこいです。
「区切りで終わりをコントロール」+「気持ちを切り替える」は必ずセットです。
区切りがわかっても気持ちの切り替えが上手くいかないと、私たちは目の前の作業をまた続けてしまいます。
リズムに乗り過集中になった私達はそれを何時間でも続けることが出来るかららです。
失敗の原因の多くはここにあります。
自分の意思で「集中モード」に入れるように工夫を見つける
自分に合った「集中モードに入る方法」を見つける。
これも重要です。
「今やめたら次にいつ集中モードに入れるかわからない」という状態だと、できる時にやっておこう!という思いが働いて、作業を途中で止められなくなります。
いざとなればこれで集中モードに入れる、という方法を知っていれば「止める」ことが怖くなくなります。
例えば
- お気に入りの音楽を聞く(作業用BGM、リフレッシュ用BGM、モチベーションUP用BGMなどあらかじめ決めておくと便利)
- 自分の得意な単純作業をする
- その他短いタームで出来るもの(折り紙、パズル、塗り絵など途中で切り上げられるものや区切りがつけられるもの)
はいかがでしょうか。
これをすれば10分から15分ほどである程度モードに入れる、というものを見つけてみてください。
やろうと思った時にまた集中して取り組めることが分かれば、「止める(区切りをつける)」のが怖くなくなると思いませんか?
工夫すればできる
時間感覚が不安定で、さらに「ある」か「ない」かで物事を考えがちな私たちにとって、時間に間に合うように行動するとか、衝動性を抑えて待つ、というのには工夫が必要です(不可能ではない)。
私たちは「できない」のではなくとても「苦手」なのです。
「0」ではないし、「100」になる必要もありません。
諦めずに今より少しでも生きやすくなるように、自分にあった工夫を探していきましょう(^^)!